有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、いくつかの法律が絡み合って規制を受けています。

関連する法律は主に以下の通りです。

・老人福祉法

・介護保険法

・高齢者住まい法

有料老人ホームは、老人福祉法 第29条に規定された高齢者向けの生活施設で、「常時1人以上の老人を入所させて、生活サービスを提供することを目的とした施設で老人福祉施設でないものをいう。」と定義されていますが、2006年4月の法改正により、10人以上との人員基準が撤廃され、食事提供だけでも生活支援サービスに該当しているということになりました。

この撤廃により、有料老人ホームの定義から外れていた小型の無届施設が一斉に規制を受け、安全基準の徹底など行政のチェックが積極的に行われるようになったのです。まだ記録に新しい”たまゆら”事件の再発防止のために規制が強化されたのです。

この説明で若干わかりにくい点は、”老人福祉施設”でないものをいう”という点ではないでしょうか?老人福祉法で定められている老人福祉施設とは、老人デイサービスセンター、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム等を指し、有料老人ホームは老人福祉施設にはあたらないのです(高齢者向けの集合住宅という位置付けです)。

有料老人ホームと名乗るためには、一定の基準を満たした上、都道府県に届け出を行う必要があります。逆に言いますと、一定基準を満たし、届け出をすれば自由に有料老人ホームを開設することができるのです。

ここで、もう一つ重要な法律は、介護保険法 です。介護保険法の中で規定されたサービスとしては、「特定施設入居者生活介護」が特に重要です。

「特定施設入居者生活介護」は、特定の施設(具体的には、有料老人ホームや高齢者専門賃貸住宅等)において、入居者が利用する介護保険サービスのことです。要介護度に応じて1日ごとに固定額の介護報酬を施設が請求できますので、施設はその日に提供した介護サービスの種類や提供量にかかわらず安定した収入が入ります。利用者もどのようなサービスを受けても費用負担は一定額になりますので、安心感してサービスを使えます(施設が算定する介護報酬額の10%が利用者自己負担、90%が国保連からの支払いとなります)。

上記の「特定施設入居者生活介護」は、利用者にとっても、施設にとってもメリットのある制度ですが、どの有料老人ホームにも認められるわけではありません。都道府県が特定施設の指定を与えた有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に限り、このサービスを利用できます。

この指定を受けた有料老人ホームが、いわゆる、「介護付有料老人ホーム」です。数は少ないですが、特定施設の指定をもったサービス付き高齢者向け住宅もあります。特定施設の指定は病院の病床数のように自治体ごとに数に制限がありますので、各有料老人ホーム運営会社は競ってこの枠の確保に走っています

では、特定施設入居者生活介護の指定が取れない有料老人ホームはどうなるのでしょうか?指定がある施設が「介護付有料老人ホーム」ならば、指定がない施設は介護無し有料老人ホームなのでしょうか?

これはよく聞かれる質問ですが、答えは、「住宅型有料老人ホーム」です。ここで関係の深い介護保険サービスは、在宅介護の中のホームヘルプサービス(訪問介護サービス)です。ホームヘルパーがヘルパーステーションから高齢者宅に訪問して、介護を行うというサービスですが、自宅の代わりに有料老人ホームにヘルパーが来て介護をする形態になります。有料老人ホームは制度上、集合住宅ですから、ここにヘルパーが来て介護をすることは自宅に来て介護をする場合と同じ扱いなのです。特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設に訪問介護のヘルパーが来て介護保険サービスを提供することはできません。

ただし、ホームヘルパーステーションは、住宅型有料老人ホームの中に併設されている場合も多く、また、ホームヘルパーステーションのスタッフとは組織上別の介護・看護スタッフも介護を提供することがありますので、利用者の方から見ると介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いはよくわからないことが多いです。

では、次に「介護付有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の違いをみてみましょう。

【介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違い】

1.介護付有料老人ホーム: 
介護と看護サービスは、全てホームに所属している介護・看護職員が提供 します。
2.住宅型有料老人ホーム: 
 介護と看護サービスは、併設や近隣の事業所の職員とホームの職員が連携して提供します。
 

特定施設入居者生活介護が適用される施設では、介護報酬は要介護度ごとに固定額(いわゆるマルメ)となりますので、寝たきりになってしまい毎日多くの介護が必要になっても自己負担額は一定です。一方、ホームヘルプサービス(訪問介護)は使っただけ自己負担をするシステムですので、住宅型有料老人ホームでは介護度が低い場合は介護付有料老人ホームより自己負担が小さくなりますが、介護度が高くなると自己負担がより大きな額になってしまいます。

特に在宅介護サービスの限度額を超えてしまうほど介護が必要になった場合は、100%自己負担でサービスを利用することになってしまい(平均的には1時間1500円程度)、思った以上に費用がかさんでしまったということもあります。

ホームヘルプサービス(訪問介護)を使う住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を選ぶ場合は、どの程度のサービスまで介護保険や管理費などで賄え、賄えなくなった場合にいくら追加費用がかかるのか、確認をする必要があります。

住宅型有料老人ホームによっては、介護保険の限度額を超えてしまわないようなケアプランを組み、どうしても越えてしまうサービスは施設に所属する介護・看護職員が管理費内で提供することで大幅な追加料金を発生させないような価格体系を導入しているところもあります。

【介護付と住宅型の介護保険自己負担額の例】

  要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
介護付 6,090 14,070 17,130 19,230 21,330 23,400 25,530
住宅型 4,970 10,400 16,580 19,480 26,750 30,600 35,830
  • 介護付の場合は、実際に受けたサービス量にかかわらず介護度ごとに自己負担額は一定となります。
  • 住宅型の場合は、上記が介護保険限度額までサービスを受けた場合の自己負担額となります。限度額以下しかサービスを受けない場合は、これ以下の負担となりますが、限度額を超えてサービスを受けた場合は、上記自己負担額に加え1時間1500円ほどの追加費用を徴収されるケースがあります。

グラフ1

  • 介護保険サービスの平均単価を1時間3000円として試算(自己負担は300円)。
  • 住宅型の場合、限度額を超えたサービス部分には1時間1575円(介護保険適用外)が課金される前提。

グラフ2

  • 介護保険サービスの平均単価を1時間3000円として試算(自己負担は300円)。
  • 住宅型の場合、限度額を超えたサービス部分には1時間1575円(介護保険適用外)が課金される前提。

以上の通り、有料老人ホームは、老人福祉法介護保険法に規定され、厚生労働省の管轄になります。一方、国民の住宅供給という視点から国土交通省が高齢者向けの賃貸住宅に関して、「高齢者住まい法」により規制をかけています。一定の施設基準や契約内容、サービス内容を満たす賃貸住宅に対して生活支援サービス付高齢者住宅という名称で登録することを推進しています。

高齢者住まい法は、賃貸住宅だけでなく、利用権方式による有料老人ホームも登録できるようになっており、国土交通省は、利用者から見ると違いが曖昧な、有料老人ホームやサービス付高齢者住宅を一本化させるという思惑があったようですが、殆どの有料老人ホームが登録をしていないため、利用権方式による有料老人ホームと賃貸借契約によるサービス付高齢者住宅の両方が存在しています。二つの省庁と三つの法律で規制される高齢者住宅関連の制度は、初めての方には大変わかりにくいままになっています。

お問合せ・ご相談はこちら

要介護認定高齢者でご自宅での介護が困難な方、退院後のケアが必要な方に高齢者施設をご紹介いたします。
また、相続対策で土地有効活用をお考えの土地オーナーの皆様のためのサービス付き高齢者向け住宅立上げセミナーを開催いたします。